書籍

この世の歩き方

料理家・高山なおみさんと、夫で発明家のスイセイさん。おふたりが、日々の暮らしや自身のこと、仕事や人生について、自分たちの感じることを、朝に、昼に、夜に、とことんまで語り合った対話の記録。


　たとえばはやいものとおそいものでは　
　この世の中ではどちらかというと
　はやいもののほうが重宝される
　(中略)
　それでおれはどちらかというと
　この世で重宝されないほうのじぶんを
　むしろ大切にするようにしている
　じぶんではわりと素朴な望みだとおもう
　世の中をどうこうしたいようなことじゃなく
　ただじぶん内部の平穏をたもちたいだけ
　バランスがくずれないようにしたいだけ


　自分でやらなくて、どこの誰がやってくれるんだ。
　自分の味方に自分がならなくてどうするんだ


　望むっていうことと、
　それがかなうっていうことの間にはマジックはない。
　すごく具体的な、当たり前の、
　誰が聞いてもうなずけるような努力があって、
　それはまるで、当然のことのように叶うんだと思う。


　(自分を)なかったことにしようと、
　地面に埋めるための穴を掘るにしても
　けっこうたいへんです。
　簡単に、なかったことにできません。
　圧倒的な存在感、というより、絶対に存在しています。
　「自分」というとき。
　「自分はただの物体です」というだけでは足りません。