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書籍

ハンズ 手の精神史

9784865282955

ハンズ 手の精神史

著者/ダリアン・リーダー
訳者/松本卓也・牧瀬英幹
出版社/左右社
サイズ/240ページ 19.5*13cm
発行(年月)/2020年11月

販売価格 ¥ 2,420(本体 ¥2,200)

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人々は携帯電話に忙殺されている

人間の歴史=手の歴史。私たちは、手のしもべである。アダム・スミスの「神の見えざる手」からディズニー映画「アナと雪の女王」まで、人間の歴史を「手を使って行うことの変化」として読み直す。文化や歴史、心理学や精神分析の理論を横断しながら、自分自身や他者との関係、現代に潜む病理を、ユーモアを交えつつ鋭く描き出していく。

・ヒトラーや毛沢東の繊細な手仕事
・手から離れていったフロイト、手へと回帰したラカン
・私たちの手を支配するiPhone
・ゾンビが手を前に突き出して歩いているのはなぜか
・手と自立依存症との関係
・エイリアンハンド
・手と口の病的な結びつき
・キングコングの大きな手
・アドベンチャー映画に見られる崖からぶら下がるシーンの意味
・手放すことは掴むことより難しい
・手を暇にさせておくと悪魔が取り憑くという言い伝え


「インターネット、スマートフォン、PCによって彩られる新たな時代は、私たちの存在や他者との関わり方に根本的な影響を与えたといわれている。なるほど、たしかに日常生活の根幹をなすデジタル技術によって、空間と時間という古い境界は崩壊したようにみえる。私たちは、即座にコミュニケーションをとることができるようになった。相手が遠くにいたとしても、近くにいたとしても、コミュニケーションは同様に可能であり、他の大陸に住む身内とスカイプすることもできるし、隣のテーブルに座っているクラスメートにメールを送ることもできる。画面にタッチするだけで、ウェブを介して動画や写真を流すことができるし、公私にわたる生活を事細かにソーシャルメディアに公開することだってできる。人々が電車やバスやカフェや車のなかで行っているのは、画面をタップして会話する、ブラウズしてクリックする、スクロールしてスワイプする、といったことだ。
 これらの変化の結果として、二十一世紀の私たちは新たな現実に住まうようになったと、哲学者、社会理論家、心理学者、人類学者はみな異口同音にいう。たとえば、関係がより浅くなったとか深くなっただとか、より長続きするようになったとかその場かぎりのものになっただとか、より脆弱になったとかしっかりしたものになっただとか、そういったことが語られている。多くの職場がヴァーチャルなものになるにつれて、「9時5時勤務」という枠組みに当てはまらない生活を構築する新たな可能性が生まれてもいる。私たちがどのように理解しようとも、これらの変化が実際に生じたのだということ、つまり、世界は以前とは違う場所になったということ、デジタル時代は疑いの余地なく新たなものであるということを誰もが認めている。
 しかし、人間の歴史におけるこの新時代を、少々異なる角度からみればどうだろうか? 現代文明がもたらすものへの新たな期待や不満に焦点を当てるのではなく、今日の変化を、「人間が自分の手を使って行うことの変化」として捉えてみるとすれば? デジタル時代の到来によって、私たちの経験のありさまが変わってしまった例も多いかもしれない。しかし、この時代には、もっとも明白であるにもかかわらず無視されている特徴がある。それは、これまでに前例のないほどのさまざまな方法で、手を忙しくしておくことができるようになった、ということではないだろうか。」
(「第1章 分裂する手」より)


<目次より>
1 分裂する手ー自律と自由のパラドックス
2 自律する手ー手と口の病的な関係
3 掴む手、放す手ー愛着と喪失
4 社会化される手ー手を暇にさせておくことの危険性
5 鎮める手ー感覚を取り除くための刺激
6 暴れる手ー暴力行為の効能
7 言葉と手ー手を使わせるテクノロジーの今昔

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