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9784622095699
語りと祈り
著者/姜信子 出版社/みすず書房 サイズ/328ページ 19.5*13cm 発行(年月)/2023年1月
販売価格 ¥ 4,400(本体 ¥4,000)
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いまこそ、ふたたび「声」のほうへ、「語り」のほうへ
かつてこの世の物語の多くは、土地に息づく小さな神々の声をもって語られていた。世界を語る言葉は「風土を生きる身体」によって紡がれ、人や鳥獣虫魚草木のいのちが宿っていた。そして、人びとは近代の到来とともにそれをあっけなく忘れた。 近代の前と後の断絶。たとえば村共同体の核にあった「神」や「仏」が国家神道によって追放された歴史。あるいは折口信夫が来訪神の祝言に「この世にあらわれたはじめての文学のことば」を聴き、祈りの所作に「芸能の発生」を見た、人びとの暮らし。風土の神々と共にあった民の記憶、民の物語も忘れられていった。 この列島は太古からずっと「ひとつの日本」だったのか。声を奪われつづけた世界のなれの果ての時代に、取り戻した声を手がかりにして再生の道を拓くことはできないか。 説経、山伏祭文、貝祭文、説経祭文、瞽女唄、浄瑠璃、浪曲、パンソリ……、「語り」の声に耳澄まし、失われた声を追い、名残の声に引かれて、足尾銅山、水俣、八重山諸島、済州島をゆく。来るべき「声」の場、そして反旗を翻す詩の可能性を眼差して。 <目次より> 前口上 名残の声に耳を引かれて 第一部 語り 第一章 この世の物語は命の記憶をつなぐためにある 1 山伏、比丘尼、一切成就カンマンボロン 2 近代という仕組みは、きわめて高機能の忘却装置である 第二章 「説経」と「祭文」──千年の時間の流れを早送り 1 山、野、道にある芸能 2 大道の傘の下に広がる異界からの声、「ささら説経」 3 京都・四条河原 説経操り「阿弥陀胸割」 4 忘れられた時代の声、説経「弘知法印御伝記」 5 貝祭文、上州祭文は別名デロレン祭文。江州音頭はいまでもデロレン 6 説経祭文は江戸で起こって武蔵国多摩の村々へ。村の陰陽師は芸能者 7 語りは世につれ、人につれ 第三章 なぜ「瞽女」は消えたのか? 1 語りの近代 2 前近代と近代の交わる道を越後瞽女はゆく 3 「場」、小さな声たちの共同体 第四章 浪曲! 解放奴隷の魂はビヨーンと震える 1 空気を震わせ、この世を揺らがせること 2 語りの最新型 浪曲 3 近代文学百五十年の孤独 4 近代の荒れ野を野生の説教祭文語りがゆく 第五章 なもあみだんぶーさんせうだゆう外伝 残響 壱 「記憶喪失の安寿と靴の話」 第二部 祈り 第六章 語りつぐ声、歌いつがれる祈り──近代的な私たちが忘れて生きているもの 第七章 反旗を翻す歌 1 詩人、あるいは反旗を翻す者 2 詩する者/死する者──詩人金時鐘との出会いから 3 ここに生きる──詩人谺雄二と千年ブルース 4 植民地、水俣、苦海浄土 5 若き死者からの手紙 第八章 滅びゆく水の世──足尾鉱毒事件の跡を訪ねて渡良瀬川源流、松木渓谷 第九章 来たるべきアナキズム──近代を潜り抜けた「アニミズム」と「異人」をめぐって 第十章 旅するカタリとじょろり 1 近代の彼方には「じょろり」でゆく 2 不知火浄瑠璃「トヨコ桜」 3 石牟礼道子の「じょろり(浄瑠璃)」とは何なのか? 第十一章 「ひとり」たちのための祈り 残響 弐 満月の夜の狼のように〝水俣異聞〟 納口上 私はケモノで、声で、カビで あとがき
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