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世界への信頼と希望、そして愛

9784622096665

世界への信頼と希望、そして愛

著者/林大地
出版社/みすず書房
サイズ/424ページ 19.5*13.5cm
発行(年月)/2023年12月

販売価格 ¥ 4,180(本体 ¥3,800)

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私たちはみな、その一人ひとりがひとつの新たな始まりである

〈この世界に信頼と希望、そして愛を抱いてもよいのだということ――アーレントが『活動的生』を通じて私たちに伝えようとしたのは、このあまりにも素朴な、しかしどこまでも力強い、たったひとつのメッセージである。…全体主義の時代を生きたアーレントこそ、まさにこうしたメッセージを切に求める者だったのではないか。否定されるべきものとして世界が眼前に現われる状況にあって、それでもなお、世界を否定し去ることができなかったアーレントこそ、まさにこうしたメッセージを誰よりも必要としていたのではないか〉

ここに鮮やかで瑞々しいハンナ・アーレント論が誕生した。26歳の著者は、アーレントの主著のひとつ『活動的生』(『人間の条件』ドイツ語版)を、「世界」概念を主軸として、「労働」「制作」「行為」「始まり」「出生」などのキーワードともども、「死」「可死性」「不死性」「記憶」「忘却」「過去」「痕跡」といった一連の視座から読み解き、アーレントの著作全体に連なる核心に近づいていく。膨大な注の書きぶりも併せ、ユニークで開かれた本書は、アーレントの思想をひとつのレンズとして、この世界を新たな目で眺めることをめざした試論=エッセイとなっている。


<目次より>
序章 世界と子どもへの讃歌としての『活動的生』――二つの詩歌をめぐって
第一節 「世界への愛Amor Mundi」をめぐって――アーレントを象徴する一語
第二節 本書の目的――内在的解釈を通じた『活動的生』全体の再構築
第三節 『活動的生』解釈の妥当性――ブレヒトの『バール』とヘンデルの『メサイア』
第四節 本書全体の構造――三つの問いと三つの答え

第一部 世界にたいしてなぜ信頼と希望を抱くことができるのか――物の持続性と人間の出生性

第一章 活動的生とは何か――活動的生の世界維持形成機能
第一節 三つの活動と根本条件――労働、制作、行為
第二節 活動的生それ自体――世界と活動の相互依存関係
第三節 活動的生の世界維持形成機能――世界建設的、世界創出的、世界保全的
第四節 労働という奇妙な活動――労働の反自然的=世界的側面

第二章 世界とは何か――「物」による世界の存続と「行為」による世界の新生
第一節 世界概念の二重性――人工物の世界と人間事象の世界
第二節 世界を形づくる「物」――三種類の物と持続性という尺度
第三節 物を通じた世界の存続と安定化――世界への信頼をもたらすもの
第四節 世界を新たにする「行為」――誕生、出生性、行為の関係性
第五節 行為を通じた世界の新生と不安定化――世界への希望をもたらすもの

まとめ――世界に信頼と希望を抱かせる物の持続性と人間の出生性

第二部 世界への信頼と希望はいかにして破壊されてきたのか――資本主義と全体主義

第一章 資本主義による物の持続性の破壊――「制作‐使用対象物」から「労働‐消費財」へ
第一節 社会的なものの拡大と世界疎外の進行――歴史的分析と近現代批判の主眼
第二節 労働と制作の違い――消費財と使用対象物という二種類の産物
第三節 社会的なものの誕生と労働の公的領域への進出――公と私の裂け目の消失
第四節 労働の価値転換――軽蔑の対象から賛美の対象へ
第五節 労働の肥大化――蓄積能力、労働能力、消費能力の限界の打破
第六節 キリスト教の呪縛――生命と世界の位置関係の逆転
第七節 労働する動物の勝利――近代の帰結としての定職者の社会

第二章 全体主義による人間の出生性の破壊――複数性と自発性の根絶
第一節 労働する動物の勝利の帰結としての全体主義――労働と全体主義の結びつき
第二節 全体的支配に至るまでの三段階―――法的人格・道徳的人格・個体性の抹殺
第三節 イデオロギーとテロルを通じた二重の強制――始まりの可能性の抹殺
第四節 大衆の世界喪失=故郷喪失――イデオロギーとテロルを機能させるもの

まとめ――世界への信頼と希望を破壊した資本主義と全体主義

第三部 世界への信頼と希望をふたたび取り戻すには何をなすべきか――世界への気遣いと子どもへの気遣い

第一章 世界への気遣いとしての活動的生――世界への信頼と希望のために(一)
第一節 活動の場所指定という現象――活動の場所依存性
第二節 活動の場所指定に生じた異変――社会的なものの誕生と労働の公的領域への進出
第三節 活動的生の世界形成的側面と世界破壊的側面――活動の場所指定という分水嶺
第四節 活動的生を通じた世界の気遣い方――本来的で世界形成的な活動的生

第二章 子どもへの気遣いとしての教育――世界への信頼と希望のために(二)
第一節 「教育の危機」論文と『活動的生』――教育と政治の公分母としての出生性
第二節 子どもと世界にたいする二重の責任――大人の責任としての子どもと世界の保護
第三節 保守的活動としての教育――保守と更新を通じた世界の存続
第四節 保守と革命の相互作用――子どもの誕生と世界の存続の双方向的関係=往還構造
第五節 不死性を獲得する二つの方法――人工物と物語/物化と想起

まとめ――世界に信頼と希望を抱くことを可能にする世界への気遣いと子どもへの気遣い

終章 この世界を故郷とするために――『活動的生』が伝えるひとつのメッセージ
第一節 本書全体のまとめ――持続性・出生性・永続性・不死性
第二節 世界に刻み込まれた過去の痕跡――「人類の不朽の年代記」としての世界
第三節 『活動的生』を切に欲する者――たったひとつのメッセージを求めて


あとがき
参考文献
人名索引
事項索引

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