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増補新版 韓国文学の中心にあるもの

9784781624167

増補新版 韓国文学の中心にあるもの

著者/斎藤真理子
出版社/イースト・プレス
サイズ/368ページ 19*13cm
発行(年月)/2025年1月

販売価格 ¥ 1,980(本体 ¥1,800)

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人々の尊厳はどのように維持されたかを示すこと

なぜハン・ガンは、アジア人女性として初めて、ノーベル文学賞を受賞したのか? 大きな話題を呼んだ原著に、この2年、激動する韓国文学の重要作の解説を加筆、40頁増の新版登場! 韓国文学は、なぜこんなにも面白く、パワフルで魅力的なのか。その謎を解くキーは「戦争」にある。

・著者メッセージ
本書の初版は二〇二二年七月に刊行された。その後二年と少しの間に、新たに多くの韓国文学が翻訳出版された。増補新版ではその中から注目すべきものを追加すると同時に、初版時に紙幅の関係などで見送った作品にも触れることにした。特に「第7章 朝鮮戦争は韓国文学の背骨である」の章に多くを追補している。

その作業を進めていた二〇二四年十月に、ハン・ガンがアジア人女性として初のノーベル文学賞を受賞した。本書を読めば、ハン・ガンが決して孤立した天才ではなく、韓国文学の豊かな鉱床から生まれた結晶の一つであることがわかっていただけると思う。

海外文学には、それが書かれた地域の人々の思いの蓄積が表れている。隣国でもあり、かつて日本が植民地にした土地でもある韓国の文学は、日本に生きる私たちを最も近くから励まし、また省みさせてくれる存在だ。それを受け止めるための読書案内として、本書を使っていただけたらと思う。(「まえがき」より)


<目次より>
◆第1章 キム・ジヨンが私たちにくれたもの
『82年生まれ、キム・ジヨン』の降臨
キム・ジヨンは何を描いていたか
みんなの思いが引き出されていく
「顔のない」主人公
キム・ジヨン以前のフェミニズム文学のベストセラー
大韓民国を支える男女の契約、徴兵制
冷戦構造の置き土産
キム・ジヨンのもたらしたもの

◆第2章 セウォル号以後文学とキャンドル革命
社会の矛盾が一隻の船に集中した
止まった時間を描く―キム・エラン「立冬」
キャンドル革命に立ち会う―ファン・ジョンウン『ディディの傘』
当事者の前で、寡黙で
傾いた船を降りて
無念の死に捧げる鎮魂の執念

◆第3章 IMF危機という未曾有の体験
IMF危機とは何か
危機の予兆―チョン・イヒョン「三豊百貨店」
IMF危機が家族を変えた―キム・エラン「走れ、オヤジ殿」
「何でもない人」たちの風景―ファン・ジョンウン「誰が」
生き延びるための野球術
セウォル号はIMF危機の答え合わせ

◆第4章 光州事件は生きている
五・一八を振り返る
光州事件はなぜ生きているか
詩に描かれた光州事件
体験者による小説
決定版の小説、ハン・ガン『少年が来る』
遺体安置所の少年
死者の声と悪夢体験
死を殺してきた韓国現代史
『少年が来る』は世界に開かれている
アディーチェの作品との類似性
さらに先を考えつづけるパク・ソルメ
歴史の中で立ち返る場所

◆第5章 維新の時代と『こびとが打ち上げた小さなボール』
「維新の時代」が書かせたベストセラー
タルトンネの人々
都市開発と撤去民の歴史
『こびと』は一つのゲリラ部隊
物語を伝達するための驚くべき構成
若者たちの心の声が響いてくる
生き延びた『こびと』
石牟礼道子とチョ・セヒ
興南から水俣へ、また仁川へ
『こびと』が今日の日本に伝えること
再開発は韓国文学の重要なテーマ

◆第6章 「分断文学」の代表『広場』
「分断文学」というジャンル
朝鮮戦争と「釈放捕虜」
南にも北にも居場所がない
批評性と抒情性溢れる『広場』
四・一九革命がそれを可能にした
韓国文学に表れた「選択」というテーマ
堀田善衛の『広場の孤独』
絶対支持か、決死反対か
終わらない広場
そして、日本で終わっていないものとは

◆第7章 朝鮮戦争は韓国文学の背骨である
文学の背骨に溶け込んだ戦争
苛烈な地上戦と「避難・占領・虐殺」
イデオロギー戦争の傷跡
朝鮮戦争を六・二五と呼ぶ理由
金聖七が見た占領下のソウル
廉想渉『驟雨』の衝撃
したたかに生き延びる人々
自粛なき戦争小説
望郷の念を描く自由がない―失郷民作家たち
韓国社会を見すえる失郷民のまなざし
子供の目がとらえた戦争―尹興吉『長雨』
戦争の中で大人になる―朴婉緒の自伝的小説
私にはこれを書く責任がある
避難生活はどう描かれたか―金源一
避難生活はどう描かれたか―呉貞姫、黄順元
それぞれの休戦後―兵士たちの体験
それぞれの休戦後―虚無と生きる
南北双方から見た「興南撤収」
文学史上の三十八度線
越北・拉北作家の悲劇
日本がもし分割されていたら
パク・ミンギュも失郷民の子孫
ファン・ジョンウンの描くおばあさんたち
なぜ朝鮮戦争に無関心だったのか
世界最後の休戦国

◆第8章 「解放空間」を生きた文学者たち
一九四五年に出現した「解放空間」
李泰俊の「解放前後」
「親日行為」の重さ―蔡萬植「民族の罪人」
中野重治の「村の家」と「民族の罪人」
済州島四・三事件
終わりなきトラウマ―玄基栄「順伊おばさん」
解放空間と在日コリアン作家
趙廷來の大河小説『太白山脈』
パルチザンという人々
光州から済州島へ―ハン・ガン『別れを告げない』
死の堆積の上で生き延びてきた韓国文学

◆終章 ある日本の小説を読み直しながら
あまりにも有名な青春小説『されど われらが日々―』
朝鮮戦争をめぐって激しく論争する高校生たち
ロクタル管に映った朝鮮戦争
朝鮮戦争の記憶はどこへ
「特需」という恥
十代、二十代の目に残った朝鮮戦争
なぜ韓国の小説に惹かれるのか
傷だらけの歴史と自分を修復しながら生きる
韓国の文芸評論家が読む『されど われらが日々―』
時代の限界に全身でぶつかろうとする人々の物語
良い小説は価値ある失敗の記録


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<関連書籍>
『隣の国の人々と出会う』

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