書籍

何か、不思議を感じるとですよ。

長崎県、壱岐。この島で暮らす、ごくごく普通の人々。しかし、その誰もが語るべき物語を持っている。「医師の家」の運命に翻弄される人と、一家をとりまく人々。フィリピンからやってきた一人の女性の淡い恋の記憶。軍人の父を持つ少女の強く、美しい生き様。島に暮らす人々に残る戦争の記憶…。


　「妙子ちゃん、帰りよると?　おいでおいで、ちょっとおいで」
　呼びとめられてついていく。
　「田植えダゴがたいそうあるよ。お母さんと一緒にお食べ」


　一体、こんなところで何をしているのか?
　私は故郷から遠く離れて、
　九州の隅っこにある小さな離島に向かっていた。


　悪か人も、人生やり直してほしかですけんね。
　やり直しちゅうとは、出来るとですよ。


　こげんしちみたら、色々あったなあ。


著者・松嶋圭さんが丹念に集めた、壱岐島の人々の記憶と声。それらが溶け合い、ひとつの歌を紡いでいく。島の空気、人々の力強さ、儚さ、愛おしさが、ページを繰る指から伝わってくる連作短編集。


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<関連書籍>
『太宰治賞2021』